「私は思考(T)タイプだから、感情(F)は持っていません」 「あの人は感覚(S)タイプだから、将来のビジョン(N)を描くのは無理だよ」

MBTIを少し知った人が、職場でよく陥りがちな誤解です。しかし、ユングのタイプ論やMBTIにおいて、このような考え方は完全に間違っています。

■ 心の機能は、誰の中にも「すべて」ある

結論から言うと、どんなタイプの人であっても、4つの指標(8つのカテゴリー)をすべて持っており、日常的にそれらを全部使って生きています 。

私たちの心は、「情報を集める(知覚機能)」ことと、「結論を導く(判断機能)」ことの二律背反で成り立っています 。 そして、情報を集める際には「感覚(S)」と「直観(N)」の2つのアンテナを、結論を導く際には「思考(T)」と「感情(F)」の2つのものさしを持っています 。

大切なのは、「持っているか・持っていないか」ではなく、「どの機能を『より優先して(自然に)』使っているか」というパターンの違いなのです 。

■ 意識して「全部の心」を使うことの重要性

例えば、あなたが何か重要な決断を下すとき、自然と「論理的な正しさ(T)」を優先するタイプだったとします。しかし、それだけで決断を下すと、その決定が「周囲の人々の気持ちにどう影響するか(F)」という視点を見落とす危険性があります。

人間は、タイプに関係なく、事実を認識し、可能性を探り、論理的に検討し、人への影響を考えるというプロセスを踏むのが理想です 。自分が自然には使わない(エネルギーを注いでいない)機能であっても、意識的にそれを働かせることで、より良質でバランスの取れた判断ができるようになります 。

これをMBTIでは「心の意識化を促進させる(心の成長)」と捉えています 。

■ 人事担当者のためのAction

社員を「この人は〇〇タイプだから、こういう仕事しかできない」と枠に閉じ込めるのはやめましょう。誰もがすべての心を持っています。

むしろ、チームで問題解決にあたる際は、「論理的にはどうだろう?(T)」「関係者の気持ちはどうだろう?(F)」と、あえて全員で様々な視点から考える時間を持つようファシリテートしてみてください。それが、個人の偏りを防ぎ、組織全体の意思決定の質を高めることにつながります。