今、若手社員や学生の間で「MBTI」という言葉が飛び交っています。「私はENTP(討論者)です」「僕はINFJ(提唱者)だから」といった会話を耳にしたことのある人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、もしあなたが「MBTI=ネットで手軽にできる性格診断」だと思っているなら、それは少し誤解があるかもしれません。そして、その誤解が、企業研修や人材開発の現場で思わぬ落とし穴になることがあります。

本連載では、全世界で年間数百万人が受検し、50年以上の歴史を持つ国際規格のメソッド「MBTI」について、その本質と人事施策への活かし方を全24回で解説します。

■ 「診断結果」はゴールではなく、スタート地点

まず、最も重要なことからお伝えします。MBTIは、受検者の性格を断定する「診断ツール」や「測定結果」ではありません

一般的な適性検査や性格診断は、回答結果がそのまま「あなたの性格」として提示されます。しかし、MBTIにおいて、質問紙で回答して出てきた結果は、あくまで「報告されたタイプ(Reported Type)」に過ぎません

それは、いわば「ホテルでチェックインした最初の部屋」のようなものです 。 鍵を渡されて部屋に入ってみたものの、なんとなく落ち着かない、ベッドが柔らかすぎる、と感じることがあるかもしれません。その場合、その部屋はあなたにとっての本当の居場所ではないのです。

MBTIの本当のプロセスは、ここから始まります。一定の訓練を受けた認定ユーザー(有資格者)の支援のもと、自分自身で「この部屋(タイプ)がしっくりくるか?」を検証し、最終的に「ベストフィットタイプ(Best Fit Type)」と呼ばれる、自分が最も納得できるタイプを受検者自身が見つけ出していきます

「AIや専門家があなたを診断する」のではなく、「あなたが自分自身を知るための枠組みを提供する」。結果をきっかけにして自己理解を深めるプロセスそのものが、MBTIの最大の目的なのです

■ 人事担当者のためのAction

MBTIは、「人を枠にはめて管理するツール」ではなく、「人が自律的に成長するための羅針盤」です。

もし社内で「あいつは〇〇タイプだからダメなんだ」といったレッテル貼りの会話が聞こえてきたら、それはMBTIの誤用です。タイプを言い訳や攻撃の材料にさせないよう導くことが、組織の心理的安全性を守る第一歩になります 。

次回は、この「無料診断」と「公式MBTI」の違いについて、もう少し踏み込んで解説します。なぜ採用選考にこれを使ってはいけないのか、その理由が明確になるはずです。