前回は、「MBTIは性格を断定する診断テストではなく、自己理解のためのプロセスである」というお話をしました。今回は、多くの人が混同している「ネット上の無料診断」と「公式MBTI」の決定的な違いについて解説します。
もし、あなたの会社で「今度の採用面接、応募者にネットのMBTI診断を受けてきてもらおうか」なんて話が出ているとしたら、ぜひこのコラムを読んで、一度立ち止まっていただきたいと思います。
■ あなたは「リンゴの甘さ」を測りたい? それとも「果物の種類」を知りたい?
インターネット上には、無料で手軽に受けられ、MBTIと同じような4文字のアルファベットで結果が出る診断サイトがたくさんあります。これらは、公式のMBTIと何が違うのでしょうか?根本的な違いは、その背後にある「理論」にあります。
多くの無料診断は、心理学でいう「特性論」に基づいています 。 これは、人の性格を「ものさし」で測るようなアプローチです。例えば、「外向性」というものさしを当てて、「あなたは平均よりも少し外向的ですね」「あなたはかなり内向的ですね」と、誰でも持っている特性の量や程度を比較・測定します 。これは「通知表」のようなもので、相対的に見るため、すでに評価が含まれる見方となります 。+4
一方、公式のMBTIは、ユング心理学に基づく「タイプ論」を採用しています 。 これは、「質的な違い」を見るアプローチです 。「リンゴとミカン、どちらの種類ですか?」と聞いているようなもので、何かと比較して優劣をつけるものではありません 。
・ネット診断(特性論):他人と比べてどう違うか?(比較・評価) ・公式MBTI(タイプ論):自分の中でどういう心の働きが起きているか?(質の理解)
■ なぜ採用選考に使ってはいけないのか
MBTIの倫理規定では、採用選考などにMBTIを日常レベルで悪用・誤用することを防ぐよう注意喚起されています 。これには、理論的な理由があります。
例えば「営業職にはE(外向)タイプが向いているから」と思い込み、ネット診断の結果を採用基準にしたとします。しかし、応募者は就職活動のために無理をして「外向的に振る舞っている(ペルソナを被っている)」状態かもしれません 。
また、「このタイプだからこの仕事はできない」と決めつけることは、個人のポテンシャルを無視したステレオタイプな評価につながります。MBTIは本来の素顔の自分に焦点を当てて自己理解を深めるものであり、能力やスキルを測るものではないのです 。
■ 人事担当者のためのAction
ネットの無料診断は、コミュニケーションのきっかけとして楽しむ分には素晴らしいツールです。しかし、人事のプロとして、それを評価や配置の材料に使うことは避けましょう 。
「公式のMBTIでは、タイプで能力の優劣は決まらない」という事実を社内に啓蒙することが、一人ひとりの多様性を尊重する組織風土への第一歩になります。
