「AIを入れれば会議が減る」。よく言われますが、私の実感では、減る会議と増える会議の両方があります。減るのは、情報を共有するための会議。増えるのは、AIの出したものを確認するための会議です。どちらが増えるかで、AI導入の成否が分かれます。今回は、会議と意思決定の話です。
■ 会議には三つの種類がある
会議を目的で分けると、三つになります。一つ目は、共有する会議。進捗を報告し合い、情報を揃える。二つ目は、議論する会議。論点を出し、選択肢を広げ、考えを深める。三つ目は、決める会議。選択肢の中から選び、次に進む。
多くの中小企業では、この三つが一つの会議に混ざっています。前半で報告し、途中で議論が始まり、時間切れで決まらない。あるいは、決めるはずの会議で、初めて聞く情報が出てきて議論に戻る。会議が長くて成果が薄い、という悩みの正体は、たいていこの混在です。
■ 自社での実践:会議の前後が、AIに移った
私の会社で、AIによって減った仕事の代表が、会議の後工程です。以前は、会議のあとに議事録をまとめ、決まったことを整理し、次のアクションを書き出して送る、という作業に時間を使っていました。今は、会議の記録をAIに渡せば、決定事項と次のアクションを整理した議事録が、決まった形で出てきます。私がやるのは、内容の確認と、微妙な言い回しの調整だけです。
前工程も変わりました。大事な打ち合わせの前に、AIに「この会議で決めるべきことは何か、選択肢はいくつあるか、判断の材料は何か」を一枚に整理させます。第13回で、AIに任せるときは「何が揃えば判断できるか」を先に決める、と書きましたが、会議も同じです。判断に必要なものを先に揃えておけば、会議は決める時間だけで済みます。共有は紙で終わり、議論は事前に整理され、会議には決めることだけが残る。これが、減る側の会議です。
一方で、増える会議も経験しました。AIの出したものを、そのまま会議に持ち込むと、「AIがこう言っているのですが」という説明から始まります。すると、参加者はAIの出力を検証する側に回り、会議はAIの答え合わせの場になります。これは、時間を食うわりに、何も決まらない。増えるのはこの種類の会議です。原因は、AIの出力を持ち込んだ人が、自分の判断を加えていないことにあります。
■ 組織開発の視点:AIは「共有」を消し、「決定」を残す
会議の三つの種類のうち、AIがもっとも得意なのは、共有です。情報を揃え、整理し、誰でも読める形にすることは、まさにAIの仕事です。共有のための会議は、AIが入ると、ほぼ要らなくなります。
議論は、半分がAIに移ります。論点を洗い出す、選択肢を広げる、反対意見を用意する。ここまではAIが事前にできます。けれども、その選択肢のどれに重みを置くか、自社の事情に照らしてどう読むか、という部分は、人が集まって話す意味が残ります。
そして、決定は、人にしか残りません。第6回で「下ごしらえはAI、判断は人」と書きましたが、会議はその判断が組織として行われる場所です。だからAI時代の会議設計とは、共有を会議から追い出し、議論を前倒しし、決定に時間を集中させることです。会議が減るか増えるかは、AIを入れたかどうかではなく、この設計をしたかどうかで決まります。
■ 経営者のためのAction
一つ目に、次の会議の前に、AIに「この会議で決めるべきこと、選択肢、判断材料」を一枚にまとめさせて、参加者に前日までに配ってください。会議は、その一枚を読んだ前提で、決めるところから始めます。共有に使っていた時間が、まるごと浮きます。
二つ目に、AIの出力を会議に持ち込むときは、必ず「自分はこう考える」を添えるルールにしてください。「AIがこう言っています」だけの持ち込みは禁止です。この一行があるだけで、会議はAIの答え合わせの場ではなく、人が決める場に戻ります。会議を減らすのはAIではなく、AIの使い方を決めた経営者です。
