いよいよ本連載も最終となる第5部に入ります。ここでは、人の一生を通じた「心の成長(タイプ発達)」と、MBTIを企業内で運用する際の「倫理と総括」についてお話しします。
企業の人事担当者から、「30代後半から40代の中堅社員が、突然モチベーションを失ったり、これまでの自分のやり方に自信を持てなくなったりしている」という相談を受けることがあります。いわゆる「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」と呼ばれる現象ですが、これもMBTIのタイプダイナミクスの視点から紐解くことができます。
ユングのタイプ論において、心自体にはそもそも成長したいという衝動があり、その成長は人生の前半と後半に大きく分かれると考えられています 。
人生の前半(青年期から30代頃まで)は、自分の得意な「心の利き手(主機能と補助機能)」にエネルギーを注ぎ、社会に適応するための人格形成を行います 。この時期は、得意なことをどんどん伸ばしていくため、使われない機能(第三機能や劣等機能)は影に隠れた状態になります 。
しかし、人生の後半(中年期以降)に差し掛かると、今まであえてエネルギーを注いでこなかった「影の機能(第三機能や劣等機能)」のほうに自然とエネルギーが注がれ、心の全体性を取り戻そうとする働きが始まります 。一般的に、第三機能は中年期に分化してくるとされています 。
この移行期には、これまで価値を置いてこなかった心の働きに突然向き合うことになるため、「今までの自分の選択が間違っていたのではないか」「これまでの人生は誤りだったのではないか」といった強い葛藤や混乱に陥りやすくなります 。これが中年の危機の正体です。
■ 人事担当者のためのAction
中堅社員が壁にぶつかっているとき、それは能力が衰退した(退行現象)のではありません。人生で最も心が成長する時期が来たという「シグナル」なのです 。
キャリア面談では、彼らがこれまで培ってきた強み(主機能)を承認しつつ、「これからは、今まで苦手だと思って避けてきたアプローチ(第三機能など)を取り入れてみる時期かもしれませんね」と、新しい自己開拓の背中を押してあげてください。
